受動喫煙を防止するなら受動虐待を防止する条例を!:アウェアの主張

代表 山口のり子

東京都は「子どもを受動喫煙から守る条例」を2018年4月1日に施行しました。その条例では、受動喫煙による健康への悪影響に関する理解を深めるとともに、いかなる場所においても、子どもに受動喫煙をさせることのないよう努めるなど、都民の責務に関する規定を設けています。

 だったら、家庭内の子どもの「受動虐待防止」(筆者の造語)とでもいうような条例も検討してもらいたいものだと、私は思っています。厚労省の発表では、全国の児童相談所が2016年度に児童虐待の相談・通報に対応した件数は12万件超で過去最悪となり、配偶者への暴力で子どもが心理的ストレスを受ける「面前DV」が半数を超えると報道されました。この「面前DV」という言葉がよく使われますが、面前DVだけが問題ではありません。

 多くのDV加害者に接した経験から、DVは病気でも遺伝でもなく、経験や環境から学んだものだといえます。DVが起きている家庭では、子どもは常に毒の混じった空気を吸っていると考えるべきです。受動喫煙が子どもの肺を真っ黒にして重大な健康被害を与えるものであるなら、DVは険悪な雰囲気・緊張・不安・恐怖などを感じさせ、ゆがんだ価値観・まちがった言動などの害にさらすことで子どもの心を真っ黒にするものです。子どもは安心して安全に暮らし成長する権利を奪われ、その人生まで左右されます。

 受動喫煙防止条例案には努力義務だけで罰則規定はないそうですが、受動虐待防止には行政・警察・司法などによる積極的な介入と罰則が必要です。罰金等を科すだけでなく、DV加害者プログラムを受けて自分の価値観や振る舞いなどを変える義務を科す条例とその受け皿(DV加害者プログラム)を東京都には率先してつくってもらいたいものです。